ときは平成、気持ちは原始人(?)

昨年10月のオープン以来ずーっと気になっていた江之浦測候所へ。
ディレクターはアーティストの杉本博司さん。
直島で見た海景シリーズ、護王神社に惹かれてますます興味が湧いてきたところでの訪問でした。

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場所は東海道本線小田原駅から二駅先の根府川。周りに畑と民家が点在しているだけのとても静かな海辺の町です。
測候所はここからシャトルバスで10分弱のところにあります。

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完全予約制、完全入替制ですので、ゆったりと作品を楽しむことができます。
ここに展示されている作品は本当に多種多様。古代から古墳やローマのコロッセオをイメージして作られた石造建築から、根津美術館から移設した門や茶室といった木造建築、そして光硝子の舞台や回廊といった新素材建築まで。
作品を追いかけながら勝手にタイムトラベルできてしまいます。

根津美術館から移設した門

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②光硝子の舞台とコロッセオ風観客席

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とはいえ、この美術館の最高傑作はここから見える湘南の海なのでは?と思います。
海を目の前にして、その圧倒的なスケール感というか、包容力というか、なんとも形容しがたい何かに屈服。
対する自分は「なんてちっぽけなんだ!!」と、、、。
でもそれはマイナスの意味ではなく、「何ちまちまと意地張っているんだ!」とか「もっと自由に、大胆に行きていいんだ!」という気持ちにさせられるので◎

③海景

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④杉本さんの海景シリーズがズラーッと並ぶ回廊

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もともとディレクターの杉本さんは人類の記憶、とりわけ「人間の自意識はどのようにして生まれたのか?」ということに興味があるとのこと。
そこで、現代という時間に身を置きながら自意識に目覚めた原始人の原体験を、追体験する場所として海へ辿り着いたそうです。

以下は、今読んでいる杉本さんの本からの引用です。

「人は他の物達から超然として意識をさせ、文化を育み、アート、宗教、科学、を発達させ、歴史を紡いできた。そのいちばん始めの意識の発生現場、それは心の発見と言い換えてもよいのだが、海景にはその発生現場の意識を現代に再び喚起させることができるような力が潜んでいるような気がする。」

⑤回廊の先を行くと、、、

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とにかく、作品数も多いし、その一つ一つに込められたエピソードが非常に深い。そして、そもそもこの観測所のコンセプトそのものを咀嚼するのに時間がかかります。
一度では処理しきれず、見に行って一週間経った今でも心の整理ができていない状態です。

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誰も答えを知らない問いについて考えることは、苦しくも楽しくもあります。
せめて土日ぐらいでも、こういうスケールの大きい問いにぶつかってみるのもありなのかなと思います。

※ここで文章に書き出して整理してみたので、また再挑戦しにいくつもりです!(23/100)

<引用文献>

『アートの起源』(2012)/新潮社/杉本博司 

p.26より引用